「進化」とは

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進化論はすごく良くできた話だとは思うのですが、誰かが見たわけでも、証明したわけでもない。かねがね私は、本当かな? と思う部分があったので、自分を信じさせるには目で見て確かめてみるしかない

「進化」の実験なんて、できるわけがないと思ってしまいがちですが、先生は実験室の中で実行してしまった

動機は結構単純なんです。より優れた種が残るんだという進化論の通りであれば、勝ち残るためには日々頑張らねばならないのかなと思ったら、気が重くなりまして

「優れていないものは滅んでしまう」という進化論の考え方も、これだけ多様化した生物が存在する現実を前にすると、果たしてそうなのかなと思ったわけです。それが真実であれば、今、存在するものは、これまでで一番優秀で能力が高いということになりますよね? それも本当かな

進化というのは、突然変異がどのようにして後に伝わっていくのかが、1つのポイント

勝ち残りゲームを仕掛ける

進化論でいう「自然淘汰」の論理でいけば、たくさんのグルタミンをつくることができる大腸菌が増殖していく。その一方で、その能力の低いものは減少し、いずれ滅んでいく

自分が生き残るためにグルタミンをつくっていますから、いわば利己的です。しかし、完全に利己的になるというのは難しいようで、たくさんのグルタミンをつくっても、取りこぼしたり、漏らしてしまうような大腸菌も出てくるのです。また、せっかくつくっても途中で死んでしまう大腸菌もいます。そうすると、必ずそのおこぼれを頂戴しようというタイプが出てくる

さまざまなレベルの種が、培養槽の中で共存している

何度繰り返しても、能力の高い種だけが残ることはなかった

その時は確かに弱かったのでしょう。しかし、周りの面子が変れば、生きていくこともできるわけです。となると、能力が低いから滅んだともいい難く、むしろ周りとの相性が悪かったから滅んでしまったともいえる

そのものの質はもちろん大切だけれども、それよりも周りとの関係性の方が、運命を支配する重要なファクターなのではないか

大腸菌酵素1つとっても、相互作用があるとなると、さまざまな要素から成り立っている生物の相互作用はますます複雑になるわけですね。これが多様性が生れるメカニズムである

自然淘汰」「適者生存」の通りに行けば、優れた種1つだけが残るはずです。けれども実験では、能力的に7合目や8合目レベルのものが結構うろうろしていることが分りましたし、さらに2合目レベルでも生きていられることも分りました。これも偏に相互作用のおかげ

新しいものが生れれば新しい状況になり、関係性も変化していきます。そして、さらに新しいものが出てきたら、三角関係になったり、四角関係になったり、どんどんダイナミックになって、多様性を生み出すのではないでしょうか

生命そのものが、まさにそういう仕掛けでできている

人間に当てはめてみれば、優秀な人ばかり集めても、常に全員が優秀だということはあり得ないわけです。誰かが優秀であれば、必ずさぼる人も出てくる、逆にさぼっている人を見て、優秀な人はますます頑張る、なんていう相互関係も出てくるのではないでしょうか。また、逆に考えれば、多様な状況では新たな相互関係も生れてくる

アイディア自体は、そんなに独創的ではないと思いますよ。「進化を見てみたい!」「生物のようなものをつくってみたい!」というのは、誰でも思いつくようなテーマだし、子供の頃に思った人も多いのではないでしょうか。しかし、大人になってそういう気持ちを忘れてしまったり、できないだろうとやらないだけなんです。ですから、結局は「やってみたい!」という気持ちが大事